物質主義は金銭の獲得や,所有,地位を重視する心理構造と関連するものと考えられ(Kasser, 2018),特に消費者研究の分野で注目されていますが,物質主義の高まりはWell-beingを損ねるとの指摘があります(Kasser,
2018)。個人の物質主義の度合いを測る尺度としてMVS(Material Values Scale)がRichinsらによって開発されており,開発当初は18項目版が,その後6項目〜15項目版が発表されています(Richins
& Dawson, 1992; Richins, 2004)。この尺度はオリジナル版では3因子構造をとり,それぞれ,成功(因子),中心性(因子),幸福(因子)と名付けられています。成功因子は人生の成功の指標として所有物をための所有物を考えること,中心性因子はモノの獲得と所有の重要性,幸福因子は所有が幸福のために必要であること,とそれぞれ関係するとされています(Richins
& Dawson, 1992)。他国語版ではこの3因子構造が再現されないケースもあり,私達も因子負荷量について一定のカットオフ基準を設定して日本語版18項目の探索的因子分析等を行った結果,より適合度が高く,妥当性が高いと思われたのは,成功/中心性因子と幸福因子からなる2因子構造で,逆転項目を除いた以下計6項目による質問構成でした。これを日本語版物質主義尺度(J-MVS-P6)としました(Ohno
et al., 2022)。J-MVS-P6は「1: まったくあてはまらない」〜「5: かなりあてはまる」の5件法で評価してもらうものです。平均得点が高い程物質主義の傾向が強いものと評価できます。
1) 高価な家,車,衣服を持つ人々に私は憧れを抱く
5) 私は,人々に印象づけるようなものを持つのが好きだ
12) 私はとても贅沢な生活が好きだ
15) もし私が今持っていないものを持てるようになったら,私の人生はもっと良くなるだろう
17) もし,もっと多くのものを買う余裕があったとしたら,私はもっと幸せになれるだろう
18) 欲しいもの全てを買う余裕がないことが,時々私をかなり悩ませる
※1), 5), 12): 成功/中心性領域,15), 17), 18): 幸福領域
出典)Ohno, H., Lee, KT. & Maeno, T. The Japanese version of the Material Values Scale: construct assessment and relationship with age, personality, and subjective well-being.BMC Psychol 10, 200 (2022).