相対的剥奪感とは,例えば「自分と同じような他者」が持っているものなどの基準と比較して,望むことが当然と思われるような結果が"剥奪"されていると感じることによって生じる憤りや不満のことを指します(Callan et al., 2011; Crosby, 1976)。例えば第二次大戦中のアメリカの憲兵隊と航空隊を比較すると,昇進率の高い航空隊において,昇進機会について否定的な捉え方をしている割合がより高く,また,その中でも高学歴である兵士の方が昇進率が高いにもかかわらず,昇進機会について否定的な捉え方をしている割合が高かった(Stouffer et al., 1949)ことが知られています。人間には,自分と何らかの共通項を持つような人々と比較し,一定の期待水準を持ち,自分自身がその水準に到達しないことで不満が高まる性質があると言えます。こうした不満度合いを測るPRDS(個人的相対的剥奪尺度:Personal Relative Deprivation Scale)はCallanらによって開発されており(Callan et al., 2011),私達はこの日本語版(J-PRDS5)を開発し,その初期評価を行いました(Ohno et al., 2022)。この相対的剥奪感については身体的健康や精神的健康との相関(Callan et al., 2015)や,主観的Well-beingとの相関があることが判っています(Ohno et al., 2022)。J-PRDS5はCallanらのオリジナル版と同様の以下5項目から構成され,「1: まったくあてはまらない」〜「6: とてもあてはまる」の6件法で評価してもらうものです。平均得点が高い程相対的剥奪感が高いものと評価できます。
1) 自分と同じような人がもっているものと,自分がもっているものとを比べて考えてみると,私は恵まれていないと感じる。
2) 自分と同じような人と比較すると,私は恵まれていると感じる。
3) 自分と同じような人が,どれだけ豊かに過ごしているかわかったとき,私は苛立ちを感じる。
4) 自分が持っているものと,自分と同じような人が持っているものとを比べると,私は自分が良い状態にあると思う。
5) 自分と同じような人が持っているものと,自分が持っているものとを比べると,私は不満を感じる。
※2)及び4)は逆転項目として処理する。
出典)Ohno, H., Masuda, S. & Maeno, T. A Japanese Version of the Personal Relative Deprivation Scale (J-PRDS): Development and validation of the J-PRDS. Curr Psychol (2022).