脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説―


前野隆司
筑摩書房20041115日第1刷発行
ISBN
4-480-84265-9Cコード:c0011,定価:1900円(税別),240ページ


  表紙写真 西村陽一郎 水の記憶2/2002

目次

プロローグ 死んだら心はどうなるんだろう

第1章 「心」 ―もうわかっていることと、まだわからないこと

1・1 心の5つの働き (心とは何だろうか?/心の鍵は意識と無意識)
1・2 意識の3つの謎 (心は脳に宿るのだろうか?/心はどこにある?)
1・3 〈私〉と「私」と「自分」の関係 (「私」と<>の違いとは?/前野隆司と前野隆司2号の違いとは?/なぜ<>だけが<>なのか?)
1・4 脳の無意識を担う「小びと」たち (役割をこつこつこなす小びとたち/脳のバインディング問題とは?)
1・5 「私は生きているんだ!」という質感 (「クオリア」とは何か?/クオリアは最大の謎か?)

第2章 「私」は受動的 ―新しいパラダイム
2・1 からだのどこまでが自分なのか? (シロアリの腸内バクテリアはシロアリの一部か?/大腸菌は人間の一部か?)
2・2 脳=「私」、ではない!? (剣玉は自分の一部か?/小びとたちから見ると中も外も同じ)
2・3 目で見るのではなく、脳を見ている「私」 (なぜ「赤いリンゴ」とわかるのか?/私たちは「赤いリンゴ」という情報を見ている)
2・4 「私」ではなく、小びとたちが考える (「私」は主体的に考えているか/考えているのは「無意識」の小びとたち)
2・5 喜怒哀楽も、小びとのいたずら (胸がキュンとするのも受動的?/笑った顔を作ってみると嬉しい気分になる)
2・6 「意図」も主体的ではない? (「よーい,ドン!」と走り出すとき決意はすべての始まりか?)
2・7 指を動かし始めたあとで、動かそうと意図する「私」 (リベット博士の実験の衝撃/私は「意図」したと錯覚している)
2・8 人は何のために錯覚するのか? (脳は空間を都合のいいようにひずませる/脳は空間のつじつまも合わせる)
2・9 心の地動説 ―地球は太陽にしたがい「私」は「自分」にしたがう (「意識」するタイミングは錯覚/錯覚した方が都合がいい/心の地動説)
2・10 川の下流にいる「私」 (小びとたちは多数決で決めている/ニューロンは使ったものほど発火する/結果だけを見て錯覚している「私」)

第3章  人の心のたねあかし ―意識の3つの謎を解く
3・1 「私」は心を結び付けてはいない (心はバーチャルワールド/脳はバーチャルリアリティーに近づけるか)
3・2 「私」は何のために存在するのか? (エピソード記憶ができないと不便?/「意識」はエピソード記憶のためにある)
3・3 自分のコピーを作ると<>はどうなる? (前野隆司2号の中の<>とは何なのか?/<>の正体は無個性なクオリアの錯覚)
3・4 個性や創造性は心のどこが担うのか? (人の個性は小びとが担う/「私」は蚊帳の外)
3・5 心の質感は何のために存在するのか? (クオリアについての3つの疑問/クオリアは何のためにある?)
3・6 心の質感はどのように表現されるのか? (クオリアと言語の違い/「コンピュータクオリアの開発」)
3・7 心の質感はどのように感じられるのか? (指先の触感は錯覚としか考えようがない/生き生きとしたクオリアはみな錯覚)

第4章 心の過去と未来 ―昆虫からロボットまで
4・1 動物は心を持つか? (心を持つのは人間だけ?/霊長類は心を持たない?)
4・2 昆虫の気持ちになってみると!? (羽アリは痛いと感じるか?/昆虫の気持ちの味わい方/昆虫と人の違いは?)
4・3 夢・催眠・超常現象・神秘体験の意味 (人は何のために夢を見るのか/脳が作り出す超常現象)
4・4 東洋的な世界観と受動的な「私」 (「私」は生かされている)
4・5 永遠の命は可能か? (究極の選択/私たちが失いたくないのは<>/人が死を恐れる理由とは?/<>は永遠)
4・6 心を持ったロボットは作れる (心を持ったロボットを開発してもいいですか?/ロボットの個性は作りこめる/心を持ったロボットのメリット/心を持ったロボットの問題点)
4・7 人も動物もロボットも平等な社会 (人類の歴史は富と権利の拡大の歴史/動物への人権拡大/ロボットへも人権拡大/素朴な自然崇拝の再来

第5章 補遺 ―「小びと」たちのしくみ
5・1 コンピュータと脳は同じか? (「小びと」はニューラルネットワーク/コンピュータも脳も1+1を繰り返す計算機/脳がコンピュータよりもすごいところ)
5・2 ニューラルネットワークは万能コンピュータ? (階層型ニューラルネットワークの計算の仕組み/ニューラルネットワークにソフトはない)
5・3 フィードバックとフィードフォワード (フィードバック制御のしくみ/フィードフォワード制御のしくみ)
5・4 フィードフォワードモデルの学び方 (なぜこぶを乗り越えられるようになるのか?)
5・5 順モデルによる脳内イメージと思考 (練習しなくても上手くなる方法/行動の3つの方法/心はニューラルネットワークで表現できる)

エピローグ <>は死なないんだ

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