デジタルミュージアム

 

現在の博物館は、美術品や出土品等を単に持ってきて展示するという方法が行われ、利用者は展示品に関する情報はインターネットから取得する方が便利という状況もあり得る。
本研究では情報化時代における博物館の新しいあり方として、展示品に関する背景や説明等の雰囲気を同時に伝える空間型AR展示の実現を目指している。
具体的には大画面ハーフミラーを使用した空間型AR(拡張現実感)ディスプレイを使用し、展示空間の中でCG映像と融合した展示手法を行う。この際重ね合わせるCG映像の配色やカメラワークの制御を考慮することで、展示物だけ、CG映像だけ、あるいは両者を組合せた提示方法を行うことができる。
本研究成果は、2010年10月に日本科学未来館で開催されたデジタルコンテンツExpoで実際に展示を行った。

コンテンツの制作方法

空間型AR技術を用いた展示コンテンツは以下のプロセスで開発を行う。

・3Dモデリングソフト 3ds Max を用いてコンテンツのモデルおよびアニメーションの作成を行う。
・このコンテンツモデルをREMO Exporterのプラグインを使用してxrmデータとして出力する。
・このxrmフォーマットのデータをREMO converterを用いてrmwデータフォーマットに変換する。

・REMO SDKを用いて構築された空間型AR展示のソフトウエア AR Viewer でrmwフォーマットのコンテンツデータを読み込むみ、AR Viewを用いてアニメーションを含めたコンテンツの表示を行う。



SICAN文明展示への応用
空間型AR技術を用いた博物館展示の応用例として、2009年に国立科学博物館で開催されたシカン展で展示された黄金の仮面のAR展示コンテンツの開発を行った。黄金の仮面が発掘されたロロ神殿や発掘された当時の様子をCG映像で説明しながら、実際の展示物の黄金の仮面に切り換えて提示する。

SICAN0 SICAN1 SICAN2
      ロロ神殿CG表現               黄金の仮面のCG表現            黄金の仮面の展示物

研究体制

文部科学省:「デジタル・ミュージアム実現のための研究開発に向けた要素技術及びシステムに関する調査検討」
共同研究機関:筑波大学、宮城大学、国立科学博物館、TBS、文化総合研究所


参考文献
・Kaori Sukenobe, Yoshisuke Tateyama, Hasup Lee, Tetsuro Ogi, Teiichi Nishioka, Takuro Kayahara: Effective Contents Creation for Spatial AR Exhibition, VRCAI 2010, pp.383-389, Seoul, 2010. (pdf)
・Kaori Sukenobe, Yoshisuke Tateyama, Hasup Lee, Tetsuro Ogi, Teiichi Nishioka, Takuro Kayahara, Kenichi Shinoda, Kota Saito: Spatial AR Exhibition of Sican Mask, ASIAGRAPH 2010 in Tokyo, pp.122, Odaiba, 2010. (ARTECH) (pdf)
・Tetsuro Ogi, Yoshisuke Tateyama, Hasup Lee, Kaori Sukenobe, Teiichi Nishioka, Takuro Kayahara, Kenichi Shinda: Spatial Augmented Reality Technology Applied to Museum Exhibition, ASIAGRAPH 2010 in Shanghai, Vol.4, No.1, pp.65-70, Shanghai, 2010. (pdf)
・資延香里、立山義祐、Hasup Lee、小木哲朗、西岡貞一、茅原拓朗、篠田謙一:空間型AR展示のための効果的な色合成手法に関する検討、第15回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集、pp.106-109、金沢、2010. (pdf)