むか〜しむかし、あるところに「シルバ国(こく)」という王国(おうこく)がありました。
王様(おうさま)のマネ王(おう)は、国民(こくみん)から高(たか)い税金(ぜいきん)をとり、城(しろ)の中(なか)は金銀(きんぎん)財宝(ざいほう)や食(た)べ物(もの)でいっぱいです。毎日(まいにち)、たまっていく宝物(たからもの)をながめては、「わしは、世界一(せかいいち)の金持(かねも)ちだ」といって喜(よろこ)んでいます。
一方(いっぽう)、国民(こくみん)たちは、働(はたら)いても働(はたら)いても税金(ぜいきん)をとられてしまうので、毎日(まいにち)の食(た)べ物(もの)もじゅうぶんに手(て)に入(はい)りません。子(こ)どもたちは「おなかがすいたよ〜」と泣(な)いています。
王様(おうさま)を操(あやつ)っているのは、闇(やみ)の国(くに)からやってきた悪(わる)い魔女(まじょ)。王様(おうさま)にとりつき、その心(こころ)を奪(うば)ってしまったのです。王様(おうさま)にもう一度(いちど)やさしい心(こころ)を取(と)り戻(もど)してもらおうと、助言(じょげん)しようとした者(もの)は、次々(つぎつぎ)と魔女(まじょ)に魔法(まほう)をかけられてしまいます。王様(おうさま)の家族(かぞく)までも、猫(ねこ)やネズミ、タヌキに牛(うし)と、次々(つぎつぎ)に動物(どうぶつ)にかえられてしまいました。
家来(けらい)たちは魔女(まじょ)をおそれて本当(ほんとう)の事(こと)を言(い)えません。大臣(だいじん)のハートが立(た)ち上(あ)がりました。ハート大臣(だいじん)は、自分(じぶん)の身(み)を犠牲(ぎせい)にする覚悟(かくご)でマネ王(おう)に言(い)ったのです。 「王様(おうさま)、毎日(まいにち)の食(た)べ物(もの)もなく、子(こ)どもたちは飢(う)えに苦(くる)しんでいます。 このままでは国(くに)はほろびてしまいます。王様(おうさま)、勇敢(ゆうかん)で偉大(いだい)な王(おう)に戻(もど)ってください。 美(うつく)しい王妃(おうひ)とかわいい王女(おうじょ)様(さま)たちを思(おも)い出(だ)してください」 でもハートの言葉(ことば)は届(とど)きません。 王様(おうさま)は「うるさい!わしに逆(さか)らう者(もの)は、こうしてやる!」 ハートは魔女(まじょ)の魔法(まほう)でたちまち、小(ちい)さなリスの姿(すがた)に変(か)えられてしまいました。
「頭(あたま)の良(よ)いお前(まえ)は逆(さか)らわないと思(おも)ったが、その姿(すがた)がお似合(にあ)いだ」と魔女(まじょ)は笑(わら)っています。 ハートは心(こころ)に誓(ちか)いました「私(わたし)はどうなってもかまわない。その代(かわ)り、王様(おうさま)の心(こころ)をもとに戻(もど)してほしい。心(こころ)やさしい、あの王様(おうさま)に」 魔女(まじょ)はハートに特別(とくべつ)に魔法(まほう)を解(と)く秘密(ひみつ)を教(おし)えてくれました。 その秘密(ひみつ)とは…… 幻(まぼろし)の4つの葉(ば)のクローバーがその秘密(ひみつ)だ。 それをきっちり4枚(まい)そろえれば、魔法(まほう)は解(と)けてみんな元(もと)の姿(すがた)に戻(もど)れるよ。 リスになったハートはたずねました。 「幻(まぼろし)のクローバーの葉(は)はどこにあるんだ?」 魔女(まじょ)は古(ふる)い巻物(まきもの)をとりだして言(い)いました。古代(こだい)から伝(つた)わる地図(ちず)がここにある。王国(おうこく)の東西(とうざい)南北(なんぼく)の果(は)てに、それぞれ4つの魔物(まもの)がすんでいる。幻(まぼろし)のクローバーの葉(は)は奴(やつ)らが守(まも)っているんだ。
この地図(ちず)には、魔物(まもの)の弱点(じゃくてん)が記(しる)されている。秘密(ひみつ)を解(と)いて魔物(まもの)を倒(たお)せるものは、本当(ほんとう)に賢(かしこ)くて、なおかつ豊(ゆた)かな心(こころ)を持(も)った勇者(ゆうしゃ)だけだ。今(いま)までそんな奴(やつ)は一人(ひとり)も現(あらわ)れなかったがね。 その時(とき)です!ハートが素早(すばや)く魔女(まじょ)の手(て)から、地図(ちず)を奪(うば)い取(と)って逃(に)げました。 魔女(まじょ)は慌(あわ)てて叫(さけ)びます「早(はや)くあのリスを捕(つか)まえておくれ。大事(だいじ)な地図(ちず)を取(と)り戻(もど)すんだよ!」
ハートは必死(ひっし)に息子(むすこ)の元(もと)へ向(む)かいました。名前(なまえ)はハッピー。父(ちち)に似(に)て優(やさ)しい男(おとこ)の子(こ)ですが、気弱(きよわ)なところが玉(たま)にキズです。 ハッピーは剣(けん)の腕(うで)を磨(みが)くため、いつも幼馴染(おさななじ)みのラッキーとおケイコをしていました。女(おんな)の子(こ)のラッキーは強(つよ)い女(おんな)の子(こ)です。 ハッピーはなかなかラッキーに勝(か)てません。 「ラッキーは気(き)が強(つよ)すぎるんだよ」と落(お)ち込(こ)むハッピーを母(はは)が優(やさ)しく励(はげ)ましました。 「ハッピー、力(ちから)は人(ひと)と比(くら)べるものではありません。一番(いちばん)強(つよ)いのは、自分(じぶん)が進(すす)む道(みち)をしっかりと持(も)つことですよ」 ハッピーは考(かんが)えました。自分(じぶん)の進(すす)む道(みち)ってどんなところなのだろう?
そこへリスにかえられたハッピーの父(ちち)、ハートが戻(もど)ってきました。 「ハッピー!急(いそ)いで旅(たび)支度(じたく)をするんだ」 リスになった父(ちち)の姿(すがた)に驚(おどろ)く間(ま)もなく、魔女(まじょ)たちが追(お)ってきました。 急(いそ)いで旅(たび)支度(じたく)をして出(で)かけるハッピーたち。しかし、体(からだ)の弱(よわ)い母(はは)は一緒(いっしょ)には逃(に)げられません。 「母上(ははうえ)を置(お)いていけません」というハッピーでしたが、「わたしは大丈夫(だいじょうぶ)。自分(じぶん)の力(ちから)を信(しん)じるのです。帰(かえ)りを待(ま)っていますよ」と母(はは)は無理(むり)やりハッピーを送(おく)り出(だ)しました。 母(はは)は追(お)ってきた魔女(まじょ)に、美(うつく)しい花(はな)に変(か)えられてしまいます。 こうして、ハッピーたちは冒険(ぼうけん)に旅(たび)立(だ)ったのです。