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当研究室の諸活動は、大まかに言って図1に示すとおり、エネルギー生産システムや石油化学コンビナートのように、@大規模複雑な技術システムを運用する、組織の健全性を向上することにより事故・トラブルを起こしにくい組織風土・文化を作り上 げること、A大規模技術システムを制御するソフトウェアおよびコンピュータシステムの品質や運用信頼性を高めること、の二点であり、@については組織の経営層を含めたガバナンス、コミッ トメントの実効性を高めると共に、従業員層・管理層のチーム ワークを向上するための諸施策、モチベーションを向上するための諸施策を包含する。 具体的には以下の研究テーマを実施している。

     
 
01 事故・コンプライアンス問題を起こさない組織に変革するための安全文化醸成に関する研究
  組織の安全文化を醸成するには、経営層・管理層・従業員層のすべての構成員がリスクの大きさに応じた防護策を講じ、安全を優先する態度をもたねばならない。このためには、組織の安全性向上に向けた自律的な取組みが必要不可欠であり、自己評価により自組織の安全文化レベルを評価して、弱点を補強することが求められる。このため、安全文化の自己評価システム(図2参照)をいくつかの組織に適用するとともに、安全文化の8軸(組織統率、責任関与、相互理解、危険認識、学習伝承、業務実施、資源配分、動機付け)に対応したシステムに改良した。

 
02 事故を未然防止に向けた大規模プラントを対象とした安全管理システムの開発に関する研究
  大規模複雑プラントでは安全管理を具体的にどのように実施していくかが明示的に示されておらず、管理の実効性が失われているケースが多い。すなわち、統合的、合理的、体系的な安全管理システムとなっていないため、他事業所で成功した管理法をスポット的に導入したり、規制への対応のためのパッチ的導入など場当たり的な管理システムとなっており、無駄な重複が多く、現場の負担が大きなシステムとなっている。そこで、安全管理の実効性を確保するための組織風土・文化の改革を含め、リスク情報データベースを中核とした系統的な安全管理システムを開発し、大規模プラントの安全管理システムとしていくつかの企業に提供していく。

 
03 安全と業績のバランスを考慮した組織風土・文化を創成するための調査研究
  企業業績および安全度に代表されるパフォーマンス指標と製造業に分類される企業群の組織要因(風土・文化指標)との関連性について検討するため、広汎な企業群(約2000社)を対象としたアンケート調査を実施する。収集されたアンケートデータは主因子分析により、主要な組織要因を抽出し、業績あるいは安全と関連の深い因子を抽出する。これらの因子間の潜在的関係を共分散構造分析により明らかにし、業績および安全パフォーマンスを向上するために改善すべき効果の大きい因子を抽出し、組織改革の方向性を提案する。現在、アンケート調査の実施に向けての準備が完了している。
 
04 組織活性化を図るための従業員モチベーションの向上のための調査研究
  組織構成員のモチベーションは当該組織の活性度を規定する重要な因子である。これを向上させるための方策を検討するため、モチベーションに関する因果モデルを構成し(図4参照)、このモデルの妥当性および営利組織・非営利組織での違いを検討するため、まず、モチベーションを向上させにくいと考えられる地方自治体を対象にアンケート調査を実施する。現在、アンケート様式を完成させ、調査対象自治体を選定している。

 
05 組織活性化を図るためのグループダイナミクス改善に関する調査研究
  職場におけるチームワークを向上させることは、組織全体を活性化させるために必要不可欠である。グループ内のコミュニケーション、協調関係を改善する試みをグループダイナミクスの改善と捉え、そのための訓練手法を開発することが目的である。現在、コミュニケーションを改善する手法として、カウンセリング技術、インタビュー技術、ファシリテーション技術、NLP(神経言語プログラミング)、説得術、アサーション技術、コーチング技術など多種多様な手法が提供されているが、これらを体系的に整理し、組織の特性(信頼性重視、創造性重視)に応じて必要な訓練を提供することが求められる。現在、各種手法を体系的に分析し、組織特性を把握する調査を計画している。
 
06 大規模システムの健全性を確保するためのソフトウェア開発・システム運用信頼性向上に関する研究
  大規模複雑技術システムの信頼性の高い運用にはそれを制御・コントロールするソフトウェアおよびコンピュータシステムの信頼性の向上が不可欠である。このため、ソフトウェアの品質向上の観点から多くの不具合の発生の原点となるソフトウェア開発の上流工程である要求定義のプロセスにおけるリスクアセスメントを行い、要求定義を効率的かつ信頼性高く実施するための方法論を開発している。現在、過去事例によるリスクの抽出、開発担当者の過去経験のインタビューによる抽出を行っている。一方、コンピュータシステムの運用信頼性向上を目的として、システムの健全性を事前に評価する手法としてHAZOP手法を採用してシステム全体の信頼性向上施策に反映するための調査に着手した。 また、運用組織のリスク認識を向上するため、組織の安全上の脆弱性を抽出するためのアンケート調査を実施し、トラブルの未然防止のための施策を検討している。
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