ビジュアルアナリティクス |
分析におけるデータ可視化は、分析結果のプレゼンテーションを目的とするものと、分析の方向性を決定するにあたり、分析者の意思決定の補助をするものとに分けられる。本研究課題では、後者に注目し、今回の対象である生体ログデータのように、本来的な形状 を持たないタイプのデータ分析の過程において、データの 3 次元的な表示と分析をシームレスに行うツールを開発することを目標とした。
多変数の生体ログデータに対して、統計解析ツール R と仮想空間構築ツール EasyVR を組み合わせることで、4K3D による可視化環境の構築を行った。 4K3D 環境でのスキャッタプロットの表示例
ビジュアルアナリティクスツールの基本機能は、次図のように表形式のデータを、R のデータフレーム(R での 表形式データ)として取り込み、カラムを x,y,z 各方向と表示色等に対応づけることで、 スキャッタプロット(3次元散布図)を行うものである。
アプリケーションの構成
本ツールが利用する rgl/OpenTK は、標準的な3D グラフィックス API である OpenGL による描画処理を行っている。このため、ここではフィアラックス社製のソフ トウェア EasyVR を使用することで、立体視表示を行う方法を取った。
EasyVR によるビジュアルアナリティクスツールの仕組み
本研究では、統計の専門家に使用してもらい、高精細大画面に立体視を組み合わせた没入環境が、分析者の変数間の関係性に対する気づきに与える影響について検討した。評価者は、新たな気づきがあった変数の組み合わせについて、①4K3D 大画面、➁2K2D 中画面、➂PC 画面(2K2D 小画面)を用いて表示の 3 条件について比較を行った。
モニタと没入型ディスプレイの配置の様子
開発した没入環境を用いて探索的な分析を行う場合、変数間の発見に寄与するツールの効果について以下のような結果が得られた。
1. 大画面を用いた点群の分離効果は、傾向の発見に寄与する。とくに、密集した点の場合に効果を発揮する。 2. 立体視による奥行き効果は、3 次元空間においてプロットが重複しているデータの場合、変数間の傾向の発見に効果を発揮する。 3. モニタやスクリーンの発色は、グラデーションで表現されているプロット群における、変数間の組み合わせの傾向の発見に効果を発揮する。 4. ビジュアルアナリティクスツールは、データセットにある変数を自動的に組み合わせることができるため、自分の思考の枠を超えた傾向の探索に寄与する。 |